ガリオン」アンヘグが言


「どうだね、二人はうまくやっていけそうかね」ベルガラスは眠気を催すような聖職者の声を無視してたずねた。
「そんなことぼくにわかるもんか」ガリオンは情けない声で言った。「彼女ときたら、次の瞬間にも何をやらかすかわかりゃしないんだSCOTT 咖啡機評測  から」
「女性はみんなそうよ」ポルおばさんが言った。
「へえ、そうかい。だったらなぜぼくにも説明してくれないんだ」
「いいえ、だめよ」ポルおばさんはセ?ネドラと同じような謎めいたほほ笑みを浮かべた。
「どうせ、そうだと思ったよ」ガリオンはぶつぶつ言った。
 ガリオンはこれから残りの生涯にわたり、かれを束縛することになる長たらしい文書がえんえんと読み上げられるあいだ、セ?ネドラのちょっとした混乱への誘いについてずっと考えていた。考えれば考えるほど、ちょっとした混乱というものがひどく魅力的に思えてきた。かれはこの儀式のあとも王女がしばらく残っていてくれて、どこか人目につかない場所で続きを話しあえればいいと思った。だがグロデグのもったいぶった最後の祝福が終わると、セ?ネドラはあっという間に宮廷の年若い少女たちに囲まれ、彼女たちだけの私的なお祝いの席に連れ去られてしまった。少女たちのくすくす笑いとかれに投げかけられるいたずらっぽい視線から見て、彼女たちの小さな集まりにおける会話は非常にあけすけで、かなりお行儀の悪いものになりそうな気配だったので、ガリオンは聞かない方が得策だろうと一人ぎめした。
 シルクとバラクの予言どおり、ベラーの高僧は何度もガリオンと個人的に話をしようと接近してきた。そのたびにガリオンはまったくの無知をよそおっては、ベルガラスを呼びにやった。結局グロデグは式の翌日に、戦士たちを全員引き連れて〈風の島〉を退去した。だがガリオンは総仕上げとして最後の侮辱を加えるために、ベルガラスをともない、怒り狂う高僧を船まで見送るといって聞かなかった。一人の熊神教信者もうっかり船に乗り損なうことのないようにとの配慮だった。
「いったい全体これは誰が考えだしたことなんだ」〈要塞〉への階段を戻りながら、ベルガラスがただした。
「シルクとぼくとで考えだしたのさ」ガリオンはいささか得意げに答えSCOTT 咖啡機開箱た。
「ひとことわしにも断っておいてほしかったな」
「でもすべてうまくいったじゃないか」ガリオンはすっかり悦に入っていた。
「だがこれでおまえは途方もなく危険な敵をつくりだしちまったんだぞ」
「ぼくたちで何とかするさ」
「おまえはずいぶん軽々しく〝ぼくたち?などと言うんだな」ベルガラスは非難するように言った。
「でもぼくたちみんなひとつ穴のむじなじゃないか、おじいさん」
 ベルガラスはどうしようもないといった顔でしばらくかれを見つめていたが、やがて笑い出した。
 だがグロデグの退去に続く日々は、ほとんど笑う機会もなかった。婚約の儀式が終わったとたん、アローンの王たち、フルラク王、それにあまたの相談役や将軍を加えた面々はただちに本来の仕事にとりかかった。議題は迫りくる戦争のことだった。
「クトル?マーゴスから最近受けた報告によれば、タウル?ウルガスは東海岸地方の氷が溶けるのを待って、南方のマーゴ軍をラク?ハガに移す準備をしているとのことだ」ローダー王が報告した。
「ナドラクの様子はどうなっている?」アンヘグ王がたずねた。
「むろんナドラクも戦争にむけて準備をすすめてはいるが、かれらに関してはいつもあまり当てにはならない。連中は自分たちの益になることを優先するから、かれらを戦列にたたせるにはグロリムたちも相当尻を叩か優思明ねばならないだろう。一方、タール人ときたらただ命令に服従するだけしか能がないときてる」
「このさい、タール人のことは考えなくともいいと思う」ブランドが意見をのべた。「すべての鍵はマロリー軍が戦闘にさいして、どれくらいの兵力を動員できるかにあると思う」
「タール?ゼリクには部隊集結地域がつくられているぞ」ローダー王が言った。「だがかれらも〈東の海〉の気候の好転待ちというところだ」
 アンヘグ王はじっと考えこみ、眉をしかめた。「マロリー人たちはあまり航海術にたけているとはいえない。恐らくことを起こすのは夏になってからだろう。その場合も北部の海岸ぞいにタール?ゼリクへ向かうことだろう。そうなったときにそなえて、われわれは大至急〈東の海〉に艦隊を派遣しておくべきだ。ある程度かれらの船を沈め、兵力を失せておけば、連中を今回の戦争から完全に締め出すことができる。ここは一挙にガール?オグ?ナドラクに攻めこむべきだと思う。森に入ったらただちにわたしの部下たちに船を造らせることができる。その船でコルドゥ川を下り、〈東の海〉に出ればいい」
「それはなかなか利点の多い案と思われますぞ、陛下」マンドラレンが壁に広げられた大きな地図を見ながら言った。「ナドラク人は数においてもっとも劣り、なおかつクトル?マーゴスの南方の軍隊からはもっとも遠い場所にあるのですからな」
 だがローダー王はかたくなに首を振った。「アンヘグ、きみの一刻も早く〈東の海〉に出たい気持ちはわかるが、そんなことをしたらナドラクの森で軍事行動を起こさなくてはならなくなる。わたしとしてはもっと開けた場所で戦闘する方が望ましいと思う。それよりもタールを叩いておけば、マードゥ川の上流地域へ一気にすすむことができる。そこから船で〈東の海〉に出ればいいではないか」
「だがミシュラク?アク?タールにはそんなにたくさんの木は生えちゃいないぞ」アンヘグ王が異議を唱えた。
「なんだって必要もないのに森林の木を切って船を造らなくちゃならんのだ」ローダー王が言った。「アルダーまで航行してそこから陸送すればいいではないか」
「あの東の崖地にどうやって船を引っぱりあげるというんだ。ローダー、冗談も休み休み言え」
「だがわが方には技術者がいるぞ、アンヘグ。連中ならきみの船を崖のてっぺんまで引きあげる方法を考えつくことだろう」
 ガリオンは会議の席上で自分の無知をさらけ出すつもりはなかったが、考える前に質問が飛び出していた。「それで最終の戦いはどこで行なわれる予定なんだ」
「どの最後の戦いのことを言ってるのかね、ガリオン」ローダー王が礼儀正しくたずねた。
「正面きって相手と対決するような戦いだよ――たとえばボー?ミンブルのような」
「今回の戦争ではボー?ミンブルのようなことは起こり得ないのだった。「どうしても防げない場合をのぞいてはな」
「ボー?ミンブルの戦いは失敗だったのさ、ガリオン」ベルガラスは静かに言った。「われわれにもそれはわかっていたが、どうしようもなかった」
「だけどぼくたちは勝ったんだろう?」
「あれはまったくの幸運だったのだ。だがじっさいに作戦をたてるときには幸運をあてにしてはいけない。誰一人としてボー?ミンブルで戦うことを望んでいた者などいなかった。われわれはむろんのこと、カル=トラクでさえもな。しかし他にどうしようもなかったのだ。われわれとしてはアンガラクの第二軍が西に到着する前に攻め入らねばならなかった。一方カル=トラクがラク?ハガに駐留させておいた南マーゴと東マロリーの軍隊は、かれが〈砦〉の囲みを解いて西へ転進するのと歩調を合わせて動き出そうとしていた。もしかれらがカル=トラクと合流しようものなら、およそ西の連合軍だけでは太刀うちできないような数にふくれ上がることは目に見えていたから、われわれは何としても戦わねばならなかった。そもそもボー?ミンブルなどおよそ戦場に向いているとはいえない場所なのだ」
「なぜカル=トラクは合流するまで待っていなかったんだろう」ガリオンはたずねた。

しゃりと言った

「バラクがどうしたっていうんだい?」
「つまり――ちゃんとバラク頭髮保養らしくみえる?」
「わたしにはそうみえるがね」シルクは肩をすくめた。「口をきくな、じっとしてろ。きみはあのイノシシにあばら骨を折られるところだったんだぞ」かれはガリオンの胸に両手をおいてやさしくおさえた。
「ぼくのイノシシは? どこにあるの?」ガリオンは弱々しくたずねた。
「猟師たちが運んでいる。きみは勝利の入城をするんだ。もっとも、言わせてもらうと、積極的臆病さの美点をもうちょっと考慮したほうがいいな。きみのその本能にまかせていたら、寿命をちぢめることになりかねない」
 だがガリオンはシルクがそう言ったときには、再び気を失っていた。
 次に目がさめると、かれらは宮殿にいて、バラクがかれを運んでおり、ポルおばさんが血だらけの服を見て青ざめていた。
「ガリオンの血じゃないよ」バラクはすかさずおばさんを安心させた。「かれはイノシシを槍でしとめたんだ。戦っているあいだにイノシシの血を浴びたのさ。この子はなん整容ともないと思う――頭をちょっと打っただけだ」
「連れてきて」ポルおばさんは短く言うと、先に立って階段をのぼり、ガリオンの部屋にはいった。
 しばらくのち、頭と胸に包帯をまかれ、ポルおばさん特製のまずい一杯のせんじ薬を飲んでぼうっとしたまま、ガリオンはベッドに横たわって、バラクに食ってかかるおばさんの非難に耳を傾けていた。「あなたって人は図体ばかり大きくて頭はからっぽなの」おばさんはいきまいた。「自分がどんなにばかなことをしでかしたか、わかっていて?」
「あの若者はとても勇敢なんだよ」バラクの声は低く、憂欝そうに沈んでいた。
「そんなことはどうでもいいわ」ポルおばさんはぴ。それから攻撃をやめ、「どうしたの?」と問いつめると、急に手を伸ばして大男の頭を両手ではさんだ。かれの目をしばらくのぞきこんだあと、おばさ中醫腰痛んはゆっくりと手をはなした。「まあ」と低くつぶやいた。
「とうとうあれが起きたのね」
「どうしようもなかったんだ、ポルガラ」バラクはうちひしがれて言った。
「今によくなるわ」彼女はうなだれたバラクの頭にやさしく手をやった。
「二度とよくなりはしない」
「少しお眠りなさい。朝になれば気も楽になってよ」
 大男は背を向けてひっそり部屋を出ていった。
 ガリオンは二人の話が、バラクがイノシシからかれを救ってくれたときに見たあの不思議なもののことだと知って、ポルおばさんにたずねてみたかった。しかし、おばさんがくれた苦い薬が深い夢のない眠りへかれをひきずりこみ、質問はできずじまいだった。

おばあちゃまになりたい

エッセーおばあちゃまの、ある記事を読んで、衝撃を受けた。
幸福に関するものである。偉人の文言がそえられている。
数日が経って、ちょっと部分的に内容を忘れた。
認知症状が日常。
また、おばあちSCOTT 咖啡機ゃまブログに飛んでいき、知りたかった忘れていたパーツをを確認した。
そのページに、付箋を貼って、バイブルにしたい。


偉人はすばらしい。
凡人ではありえない名句を遺す。
そういう深いことばを読むのは大好きである。
偉人の文章を紹介してくれる記事を部分的に拾い読みする。
省エネのええとこどり。
努力ゼロで、良い教えに接することができる。

おばあちゃまにしてみると、「もう何度も読んだ本だから、どなたか、お読みになるんだったらどうぞ」
と、軒下ガレージセールのノリだろう。
「ご自由にお取りください」、というかんじで、「ご自由にお読みください」。


わたしは、クセがある曲者である。
ニオイが、きつい。
おばあちゃまのお年頃になるまでに、取れたらよいのだが、このニオイ、さらにキツくなっているかも知れない。

今日も、どなたかが引っ張り出してくれた過去?蝶?記事を読む。
自分ながら、いいこと書いてるなあ???と感動していたら、、、
ああ、最後あたりで、キツいニオイを発して自滅していた。
あのニオイさえなければ、高得点をあげてもよいのだが、あのSCOTT 咖啡機トドメで、すべてパー。

「嫌な奴」臭を放っていた。

こんなことがあったの、ヘマしているでしょ、わたしってあほでしょ~
わたしたち、同じだよねー、あ、ごめん、ごめん、わたしみたいなあほと同じなわけないよね~、
そう言っておきながら、最後で、どっか~んと、不意打ち逆転にもっていく。
逆転どころか、高い高い高い位置から、仁王立ちになって、見下ろす。
それが見えるのであります。
なぜなら、自分が書いているので、自分の深層心理はまるわかりなのである。
そのニオイにお気づきの方は、二度とお立ち寄りになることはないと思われるが、
意外に人間は、刺激を求めたり、怖いものみたさで、「本当は怖いグリム童話」的な痛さを感じたくなる。

いちばん、やっかいでダメな人は、「バカなくせにデキると思っている、バカ」
二番目に、やっかいでダメな人は、「デキる人間が、自分はデキると思っている人」
三番目は、「バカが、自分はバカだと自覚している人」
では、四番目として、
「デキる人間が、自分はデキないと思っている」ケースは、ちょっと色を変えると、謙虚な人、ということになるのだろう。
でも、わたしは、そんな謙虚な人は、認識がオカシイと思う。
デキるのに、わざとデキないと自覚しているのは、現実をジャッジする目として、正確に判断できていない。
事実を歪めることになる。
バカな人が自分をデキると思い込むのは、バカだからわかるが、
デキる人なら、自分がデキるか、デキないかは、わかるはずである。

「バカのくせに、自分がデキる」と思うケースはじつによくある。
世間に、勘違い人間は、ごろごろ転がっている。
デキる人間は、思っていても思SCOTT 咖啡機っているそぶりを見せないが、見せる人もいる。
「デキる人間が、自分のことをデキないと思っている」という、そんな人にわたしは、会ったことがない。

デキる、デキない、は、成功体験や失敗体験の実例の積み重ねから実証され、感じることである。
失敗を重ねても、デキると思い込むバカは、自分への期待と自己防衛からそうなるのか。
では、成功を重ねているのに、自分はデキないと感じるのは、舞い上がらないように自分への戒め、慢心しない歯止め?
でも、一歩一歩着々と自信をつけて、ステップアップしていくだろうから、「デキない」と感じないはず。
つまり、(あんまり深く考えていないが)、「自分はデキるのに、デキない」と感じる人は、あまりいないのではないだろうか。
よほど成功体験をする機会に恵まれなかった人だろう。
それは、それで、嫌なニオイもしないし、眠ったままの子を起こす必要もないように思う。
「デキる」部分は、一生、目覚めないままに終わる。


なにを長々と書いて、自分を納得させようとしているのか。
自分への分析である。
「ダメなフリをして、じつはデキるんだよ~」というスタンスは、限りなく嫌われるということだ。
デキないならデキないで、最後まで、「デキない」を通すべきである。
へんに、ちょろっと、「じつは。。。」の部分を出すから、不快なニオイがきつくて、ぞっとするのだ。
後だしジャンケン、後手戦法。
卑怯ではあるが、結果的に勝った者が勝つのである。

勝った、負けたと言っている間は、お子チャマだ。
おばあちゃまの心境になるまで、あと15年近くある。
それまで、修業を積むのみ。
15年先には、ニオイのない、良いエッセーが書けるか???な?????

おじいさんになりたい小学生

お若い方から、蝶ブログをリンクしていただき、とても光栄です。
「とても光栄である」と書きたいところだが、「です」「ます」体で表現したい気持ち。

で、お若い方の年齢は、まあ、なんと、わたしのこどもたちと同じ世代。

わたしには、アラサーの男女3人のこどもがいる。
こども、といっても、大人であるが。

このアラサー3人。
わたしに似ているのか、似ていないのか知らないが、ほんの少しだけ変わっている。

息子。
彼は、小学生の時から「はやく、おじいさんになりたい」と言っていた。
今、毎日、彼の願いは、どんどん目標に近づいてきている。
こういう目標って、なんの努力もしなくていいから、いいなあ、と、不思議なわたしの感想。

しかし、今は、まだ彼はアラサーで、おじいさんではないので、まだまだ目標はほど遠い。

下の娘の同僚で、この息子の元?高校の同級生とやらがいるそうだ。
その元?同級生の弁によると
「彼は、あんなに純粋だと、社会で生きていけないんじゃないかと心配します」
とのこと。

当時の中?高校生のまんまだと、生きていけないだろう。
雑菌だらけの我が家で、しかも超おおざっぱな手抜き子育てで、なんであんなに純粋に育つのか、
親の顔が見たいところだが。親は私なので、ナゾは深まるばかり。
雑菌対応システムがオートセルフで組み込まれているのか。 あくまで、対応であって、自動除去装置ではないはず。

小学生の時は、クラスの同級生のおかあさんに、
「うちの息子みたいな乱暴な、トモダチのいない子にも優しくしていただいて、
とてもありがたく思っています」
と言われたような気がする。

別のおかあさんには、「どうやって育てると、ああいうふうになるんですか?」
と、筆記用具を携え(うそです)、メモメモ態勢の人もいた。

高校を卒業し、進路が決まったある日、
息子が居なくなった彼の部屋で、
「ああ、これで子育て卒業。子育て戦争終了」と感慨深く、ひとりで呆然と座っていたわたしがいた。

高校を卒業して、別に住むようになって、もう長い年月が経っている。

たまに帰省したりすると、息子に、おちょくられたり、からかわれたり、わたしは悪戯のターゲットになる。
生活様式について、咎められたりもする、世の中によくいる(らしい)姑のようなこともする。

あまり息子のことはよく知らないのだが、摩訶不思議な人物であることは確かだ。

もう どうにも止まらない

諸君は こんな場面を 見たことは無いだろうか。

 世間を騒がせる 大ニュース。
 例えば、 飛行機の 墜落事故。
 機体は、 未だ 発見されていない。
 TVの報道番組に映るのは、 情報を求めて 集まって来た 乗客の家族たち。
 緊迫した場面である。

 そこに実況を伝えようと、 若いアナウンサーが マイクを持って 現れる。
 そうして、 彼は、 カメラに向かって、 へらへらと笑うのだ。

 吾輩は 見たことがある。

 例えば 大事件を起こして、 記者会見に 引っ張り出された責任者。
 笑っている場合ではない 状況にあるにもかかわらず、
 マスコミの記者たちに 取り囲まれて、 へらへらと笑うのだ。

 吾輩は 見たことがある。

 これを見た ほとんどの人は、 まず、 呆れる。
「なんだ こいつ」
 しかる後に、 怒る。
 そうして、 非難するに違いない。
 なんという不謹慎。
 辞任しろ!  いや、 クビだ!  自己批判しろ! 
 憤慨するに違いない。



 吾輩が  中学生だった頃の 話である。
 放課後、 クラスメイトと バレーボールに興じていた時のことだ。
 夕暮れ迫る 閑散とした運動場に、 突然校内放送が 流れた。
 クラスメイトの女の子を呼び出す 先生の声。

 だが、 校内には 暇な私たちだけだ。 その子は 見当たらない。
「何故 Aちゃんが呼び出し?  しかも、 こんな時間に」
「あっ、 あの子のお母さんが 病気で入院してるんだよ。 何か あったのかなあ」
 我らは、 不安を抱えながら、 そそくさと下校したのであった。


 翌朝、 開始のチャイムが鳴っても、 Aは来なかった。
 担任も遅れている。
 前日の心配を口に出したら、 不幸が確定してしまうような気がして、
 バレーボール仲間は 無言で 目を合わせるばかりだった。

 嫌な予感でいっぱいの所に、 Aは 鞄も持たずに現れた。
「先生は?」 とA。
「どうしたの?」 と、 事情を知らないクラスメイト。
「お母さんが 死んだから……」
 Aの家は、 学校のすぐ傍だ。 忌引き届けを出しに来たのだろうか。
 周りから 次々に 慰めの言葉が掛けられた。

 それは、 突然、吾輩の目の目で起こった。
 小学生の時に母親を亡くした Bが、 泣きながらAに 抱きついたのだ。
 二人が抱き合って、喉も裂けんばかりの 号泣。
 吾輩は、 為す術も無く 見ているしかなかった。
 クラス中が 固まったまま、 しーん とした。

 遅れてきた担任が現れたことで、 やっと 二人は落ち着き、
 短いやり取りの後、 いつもの時間が 戻ったように見えた。


 朝のショートホームルームは、 日直が前に出て 進行する事になっていた。
 まずいことに、 吾輩が日直 であった。
 教壇に上がり、 いつもの手順で SHR を仕切り始めた時、
 何故だか、 吾輩から へらへら と笑いがこぼれた。

 クラス中から 罵声 が飛んできた。

 罵声は聞こえている。 意味も分かる。
 だが、 へらへら 笑いが 止まらない。

 人間は、何が何だか分からなくなると、 無意識に笑い続けてしまうものらしい。

 大勢に取り囲まれて、 へらへら笑っている人間を見る時、
 吾輩は 小さく 呟く。

あなたが早く心を決


「ええ。瞳の形が月のように変わるので、私がそう名づけました。まだ子ネコですが、三度目の満月を迎える頃にはすっかり大きくなります」
 イースそっくりの灰緑の瞳を覗き込んで、トールは微笑んだ。
「イスラッド王からのいただきものなので、さしあげるわけにはいきませんが、雌の方はあなたに預けます」
 イースの言葉に、トールは顔を上げた。
「雌の方?」
「このネコはつがいなのです。片割れは公宮におります。三度目の満月が昇る前に、アシュが公宮へ戻れるよう、願いたいものです」
「私が決心するまで待つとおっしゃったはずです」
 顔を強張《こわば》らせたトールに、イースは小さく笑った。
「三度目の満月までにあなたの心が決まれば、あながち嘘《うそ》とは言えないでしょう」
「それは横暴ですわ」
「譲歩、と言ってもらいたい。あなたが早く心を決めて、公宮におさまってくれれば、こんな苦労もしなくてすむのですがね」
 冷たく言って背を向けると、イースはキサ人たちの刺々《とげとげ》しい視線をものともせず、悠然と館の扉をくぐった。
「こんな夜中に、公は一体何の用かしらね」
 眠そうに欠伸《あくび》をひとつして、エシルは窓越しにしげしげとイースを見下ろした。
「決まってるわよ、お目当てはトール様ね」
 隣で、クラルがくすりと笑みをこぼした。
 見晴らしの良い丘の上、という立地上、海からの風をまともにうける二階の窓には格子が取り付けられている。
 だから、窓からどれだけじろじろ眺めたところで、下にいるイースたちに気づかれる心配はない。
「本当に、トール様とお似合いよねえ。キサ人には美形が多いって言われるけど、公を見ると自信なくなるわね。トール様と並んで見劣りしないなんて」
 そう言って溜息をつくエシルは、華奢《きゃしゃ》な体つきの儚《はかな》げな少女だ。目元に入れた刺青も、少女の美しさを損なうものではない。

両手で持

辰吉たちは三太に遅れて、二日後の昼前に戻ってきた。才太郎も痛みに耐えて、意外と元気な
顔をしている。辰吉の励ましと手当が、功を奏しているようである。
   「遅かったやないか、何を愚図々々しておったのや」
   「ここ何日か月夜だったから、兄ぃは夜駆けしたのだろ」
   「まぁな」
   「それでお蔦さんは無事だったのか?」
   「ああ、今、畑に野菜を採りに行っている」
   「独りでか?」
   「ああ、すぐ近くやさかい、大丈夫やろ」
 三太ともあろう者が何と迂闊なと、辰吉は腹がたった。慌てて飛び出そうとした辰吉を三太が止めた。
   「坊っちゃん、この縁側に来て寝転んでみなはれ」
   「何?」
   「お蔦ちゃんが菜を摘んでいるのがよく見えていまっせ」
 別に寝転ばなくでも、まる見えである。
   「本当だ、良かった」
   「今なぁ、又八さんのおっ母さんが、昼餉の支度をしてくれている、飯食ったら昼から殴りこみや、又八さん、覚悟しときや」
   「へぇ、有難うごぜぇます」

 昨日、三太の立ち回りを見た所為か、縁側から見えるお蔦の顔に安堵の笑みさえ窺える。
   「おーい、姉さん」
 又八が縁側から叫んだ。
   「又八、無事で良かった」
 三太から聞いていたので、もう心配はしていなかったようである。

   「又八さん、行くで」
 才太郎をお蔦と両親に預け、三太の掛け声に、三太、又八、辰吉の順に並んで家をでた。

 三人が彦根一家を目指していると、家の陰、木の陰、石灯籠の陰と、三人を見張っている者が二・三人見え隠れしている。
   「彦根一家の三下やな」
 三太が気付いて呟いた。
   「見るのやないで、知らんふりして歩け」
 その三下風の男の一人が、駈け出していった。一家に知らせに行ったようだ。

   「親分、来やしたぜ」
   「そうか、何人だ」
   「へぃ、又八を入れで三人です」
   「何だ、たった三人か、準備するまでも無いな、用心棒の先生に任せておこう」
 二人の浪人が親分に呼ばれて、何やら耳打ちされていた。
   「よし、分かり申した、任せておきなさい」
   「これは酒代です、三人共殺ってくだせぇ、後始末は子分どもにさせます」
  途中まで出て、又八たちを迎え討つらしい。二人の浪人は、小走りで出て行った。

   「止まれ!」
 三太達の前に、二人の浪人者が立ち塞がった。
   「何や? 何者ですかいな」
   「お前らに恨みを持つものではない、金で頼まれ申した、ここで死んで貰う」
   「嫌やと言ったら?」
   「嫌も糞もない」
 浪人二人が刀を抜いて構えた。
   「何や、たいした使い手でもなさそうやなぁ」
   「何をぬかすか、この若造が」
 一人の浪人が刀を両手で持って、三太をめがけて飛び込んで来たのをヒョイと交わして天秤棒で尻を思い切りビタンと叩かれると、浪人は及び腰で前に五・六歩進み、ベタンと前に倒れた。
   「わっ、カッコ悪い倒れ方や」
 嘲笑う三太に、もう一人の浪人が斬りかかったが、後ろから辰吉の棒で尻を突かれて、これもベタンと倒れた。
   「のびた蛙みたいや」
 嘲笑われて頭にきたのか、二人は立ち上がって落とした刀を拾うと、離れて立つ三太と辰吉に、それぞれ刃を向けた。三太は自分に向かってきた浪人の刃を横に交わすと、辰吉に刃を向けている浪人の後ろから頭をポコンと叩いた。辰吉は三太に叩かれて怯んでいる浪人を交わすと、三太に向い空振りをした浪人の後ろから頭をポコン。二人の浪人は、その場に座り込み、刀を置いて頭を擦っている。