ガリオン」アンヘグが言


「どうだね、二人はうまくやっていけそうかね」ベルガラスは眠気を催すような聖職者の声を無視してたずねた。
「そんなことぼくにわかるもんか」ガリオンは情けない声で言った。「彼女ときたら、次の瞬間にも何をやらかすかわかりゃしないんだSCOTT 咖啡機評測  から」
「女性はみんなそうよ」ポルおばさんが言った。
「へえ、そうかい。だったらなぜぼくにも説明してくれないんだ」
「いいえ、だめよ」ポルおばさんはセ?ネドラと同じような謎めいたほほ笑みを浮かべた。
「どうせ、そうだと思ったよ」ガリオンはぶつぶつ言った。
 ガリオンはこれから残りの生涯にわたり、かれを束縛することになる長たらしい文書がえんえんと読み上げられるあいだ、セ?ネドラのちょっとした混乱への誘いについてずっと考えていた。考えれば考えるほど、ちょっとした混乱というものがひどく魅力的に思えてきた。かれはこの儀式のあとも王女がしばらく残っていてくれて、どこか人目につかない場所で続きを話しあえればいいと思った。だがグロデグのもったいぶった最後の祝福が終わると、セ?ネドラはあっという間に宮廷の年若い少女たちに囲まれ、彼女たちだけの私的なお祝いの席に連れ去られてしまった。少女たちのくすくす笑いとかれに投げかけられるいたずらっぽい視線から見て、彼女たちの小さな集まりにおける会話は非常にあけすけで、かなりお行儀の悪いものになりそうな気配だったので、ガリオンは聞かない方が得策だろうと一人ぎめした。
 シルクとバラクの予言どおり、ベラーの高僧は何度もガリオンと個人的に話をしようと接近してきた。そのたびにガリオンはまったくの無知をよそおっては、ベルガラスを呼びにやった。結局グロデグは式の翌日に、戦士たちを全員引き連れて〈風の島〉を退去した。だがガリオンは総仕上げとして最後の侮辱を加えるために、ベルガラスをともない、怒り狂う高僧を船まで見送るといって聞かなかった。一人の熊神教信者もうっかり船に乗り損なうことのないようにとの配慮だった。
「いったい全体これは誰が考えだしたことなんだ」〈要塞〉への階段を戻りながら、ベルガラスがただした。
「シルクとぼくとで考えだしたのさ」ガリオンはいささか得意げに答えSCOTT 咖啡機開箱た。
「ひとことわしにも断っておいてほしかったな」
「でもすべてうまくいったじゃないか」ガリオンはすっかり悦に入っていた。
「だがこれでおまえは途方もなく危険な敵をつくりだしちまったんだぞ」
「ぼくたちで何とかするさ」
「おまえはずいぶん軽々しく〝ぼくたち?などと言うんだな」ベルガラスは非難するように言った。
「でもぼくたちみんなひとつ穴のむじなじゃないか、おじいさん」
 ベルガラスはどうしようもないといった顔でしばらくかれを見つめていたが、やがて笑い出した。
 だがグロデグの退去に続く日々は、ほとんど笑う機会もなかった。婚約の儀式が終わったとたん、アローンの王たち、フルラク王、それにあまたの相談役や将軍を加えた面々はただちに本来の仕事にとりかかった。議題は迫りくる戦争のことだった。
「クトル?マーゴスから最近受けた報告によれば、タウル?ウルガスは東海岸地方の氷が溶けるのを待って、南方のマーゴ軍をラク?ハガに移す準備をしているとのことだ」ローダー王が報告した。
「ナドラクの様子はどうなっている?」アンヘグ王がたずねた。
「むろんナドラクも戦争にむけて準備をすすめてはいるが、かれらに関してはいつもあまり当てにはならない。連中は自分たちの益になることを優先するから、かれらを戦列にたたせるにはグロリムたちも相当尻を叩か優思明ねばならないだろう。一方、タール人ときたらただ命令に服従するだけしか能がないときてる」
「このさい、タール人のことは考えなくともいいと思う」ブランドが意見をのべた。「すべての鍵はマロリー軍が戦闘にさいして、どれくらいの兵力を動員できるかにあると思う」
「タール?ゼリクには部隊集結地域がつくられているぞ」ローダー王が言った。「だがかれらも〈東の海〉の気候の好転待ちというところだ」
 アンヘグ王はじっと考えこみ、眉をしかめた。「マロリー人たちはあまり航海術にたけているとはいえない。恐らくことを起こすのは夏になってからだろう。その場合も北部の海岸ぞいにタール?ゼリクへ向かうことだろう。そうなったときにそなえて、われわれは大至急〈東の海〉に艦隊を派遣しておくべきだ。ある程度かれらの船を沈め、兵力を失せておけば、連中を今回の戦争から完全に締め出すことができる。ここは一挙にガール?オグ?ナドラクに攻めこむべきだと思う。森に入ったらただちにわたしの部下たちに船を造らせることができる。その船でコルドゥ川を下り、〈東の海〉に出ればいい」
「それはなかなか利点の多い案と思われますぞ、陛下」マンドラレンが壁に広げられた大きな地図を見ながら言った。「ナドラク人は数においてもっとも劣り、なおかつクトル?マーゴスの南方の軍隊からはもっとも遠い場所にあるのですからな」
 だがローダー王はかたくなに首を振った。「アンヘグ、きみの一刻も早く〈東の海〉に出たい気持ちはわかるが、そんなことをしたらナドラクの森で軍事行動を起こさなくてはならなくなる。わたしとしてはもっと開けた場所で戦闘する方が望ましいと思う。それよりもタールを叩いておけば、マードゥ川の上流地域へ一気にすすむことができる。そこから船で〈東の海〉に出ればいいではないか」
「だがミシュラク?アク?タールにはそんなにたくさんの木は生えちゃいないぞ」アンヘグ王が異議を唱えた。
「なんだって必要もないのに森林の木を切って船を造らなくちゃならんのだ」ローダー王が言った。「アルダーまで航行してそこから陸送すればいいではないか」
「あの東の崖地にどうやって船を引っぱりあげるというんだ。ローダー、冗談も休み休み言え」
「だがわが方には技術者がいるぞ、アンヘグ。連中ならきみの船を崖のてっぺんまで引きあげる方法を考えつくことだろう」
 ガリオンは会議の席上で自分の無知をさらけ出すつもりはなかったが、考える前に質問が飛び出していた。「それで最終の戦いはどこで行なわれる予定なんだ」
「どの最後の戦いのことを言ってるのかね、ガリオン」ローダー王が礼儀正しくたずねた。
「正面きって相手と対決するような戦いだよ――たとえばボー?ミンブルのような」
「今回の戦争ではボー?ミンブルのようなことは起こり得ないのだった。「どうしても防げない場合をのぞいてはな」
「ボー?ミンブルの戦いは失敗だったのさ、ガリオン」ベルガラスは静かに言った。「われわれにもそれはわかっていたが、どうしようもなかった」
「だけどぼくたちは勝ったんだろう?」
「あれはまったくの幸運だったのだ。だがじっさいに作戦をたてるときには幸運をあてにしてはいけない。誰一人としてボー?ミンブルで戦うことを望んでいた者などいなかった。われわれはむろんのこと、カル=トラクでさえもな。しかし他にどうしようもなかったのだ。われわれとしてはアンガラクの第二軍が西に到着する前に攻め入らねばならなかった。一方カル=トラクがラク?ハガに駐留させておいた南マーゴと東マロリーの軍隊は、かれが〈砦〉の囲みを解いて西へ転進するのと歩調を合わせて動き出そうとしていた。もしかれらがカル=トラクと合流しようものなら、およそ西の連合軍だけでは太刀うちできないような数にふくれ上がることは目に見えていたから、われわれは何としても戦わねばならなかった。そもそもボー?ミンブルなどおよそ戦場に向いているとはいえない場所なのだ」
「なぜカル=トラクは合流するまで待っていなかったんだろう」ガリオンはたずねた。