しゃりと言った

「バラクがどうしたっていうんだい?」
「つまり――ちゃんとバラク頭髮保養らしくみえる?」
「わたしにはそうみえるがね」シルクは肩をすくめた。「口をきくな、じっとしてろ。きみはあのイノシシにあばら骨を折られるところだったんだぞ」かれはガリオンの胸に両手をおいてやさしくおさえた。
「ぼくのイノシシは? どこにあるの?」ガリオンは弱々しくたずねた。
「猟師たちが運んでいる。きみは勝利の入城をするんだ。もっとも、言わせてもらうと、積極的臆病さの美点をもうちょっと考慮したほうがいいな。きみのその本能にまかせていたら、寿命をちぢめることになりかねない」
 だがガリオンはシルクがそう言ったときには、再び気を失っていた。
 次に目がさめると、かれらは宮殿にいて、バラクがかれを運んでおり、ポルおばさんが血だらけの服を見て青ざめていた。
「ガリオンの血じゃないよ」バラクはすかさずおばさんを安心させた。「かれはイノシシを槍でしとめたんだ。戦っているあいだにイノシシの血を浴びたのさ。この子はなん整容ともないと思う――頭をちょっと打っただけだ」
「連れてきて」ポルおばさんは短く言うと、先に立って階段をのぼり、ガリオンの部屋にはいった。
 しばらくのち、頭と胸に包帯をまかれ、ポルおばさん特製のまずい一杯のせんじ薬を飲んでぼうっとしたまま、ガリオンはベッドに横たわって、バラクに食ってかかるおばさんの非難に耳を傾けていた。「あなたって人は図体ばかり大きくて頭はからっぽなの」おばさんはいきまいた。「自分がどんなにばかなことをしでかしたか、わかっていて?」
「あの若者はとても勇敢なんだよ」バラクの声は低く、憂欝そうに沈んでいた。
「そんなことはどうでもいいわ」ポルおばさんはぴ。それから攻撃をやめ、「どうしたの?」と問いつめると、急に手を伸ばして大男の頭を両手ではさんだ。かれの目をしばらくのぞきこんだあと、おばさ中醫腰痛んはゆっくりと手をはなした。「まあ」と低くつぶやいた。
「とうとうあれが起きたのね」
「どうしようもなかったんだ、ポルガラ」バラクはうちひしがれて言った。
「今によくなるわ」彼女はうなだれたバラクの頭にやさしく手をやった。
「二度とよくなりはしない」
「少しお眠りなさい。朝になれば気も楽になってよ」
 大男は背を向けてひっそり部屋を出ていった。
 ガリオンは二人の話が、バラクがイノシシからかれを救ってくれたときに見たあの不思議なもののことだと知って、ポルおばさんにたずねてみたかった。しかし、おばさんがくれた苦い薬が深い夢のない眠りへかれをひきずりこみ、質問はできずじまいだった。